ALL iz thiik hai! 一社会言語学者のブログ

社会言語学&バイリンガリズム&南アジア系移民 研究を中心とした自分の思索の記録 ALL iz thiik hai とは、訳すと「ALL is オーケーだ」。かなり色々なものをかけたマニアックで深ーい表現。

大学教員(人文社会科学系)、就職するならどっち?アンケート<地方国立大 VS 大都市圏の周縁の私大>

 

アンケートをとった動機

 

 最近、こんな投稿があった。

 

 

 公募をしても、地方国立大へ応募しない人が多い、という愚痴は、少し前にも、SNS上で見た。

 

 

 一方で、大都市圏(関東首都圏)の周縁の私立大学教員として、自分の知っている、常勤職を探している人たちが応募してこないのを感じている(うちも文系教養の先生をとるのに提出された著書や論文を丁寧に読んでますよ!)。この投稿は、大げさに言っているだけかもしれないが、おそらく倍率も、地方国立の100倍に届かないと思う。

 

 本当に地方国立大より大都市圏が人気なのか。研究に強い大学、名門大学でなくても、大都市圏はそれほど人気なのか。

 

 

 

 

 

 ツイッターでざっくりとしたアンケートをとってみることにした。

 

 

私の予想―大都市圏の周縁の私大が7~8割

 地方国立大の応募者の少なさを憂うツイートと、私がこれまで見聞きした範囲から、大都市圏が人気なのでは、と予測した。

 

 予想:地方国立大 25%前後  大都市圏周縁の私大 75%前後

 

 私自身が、地方国立大に応募せず、首都圏の私立を中心に応募した。その理由は、次の投稿に通ずるものがある。

 

 

 家族(パートナー)の仕事や、子育てのワンオペを避けるには、大都市圏の方がよい。実家が大都市圏なので、子育ての安心感を多少得られることを期待した上で、ということもある。

 

 今はコロナ禍なのでどこへいても大丈夫だが、研究会や学会の参加も、都市部の方が便利だ。出身校の図書館利用もできる。私はいろいろな研究会に参加するタイプだったので、逐次大都市圏に出ていき、そのために研究費がなくなるのは嫌だった。

 

 私の知る研究者が、10年少し前に地方国立大に就職したが、5年も経たずに首都圏の周縁の私立大学に異動した。パートナーについてはしらないが、知る限りではお子さんはいらっしゃらなかった。何を理由に異動したかは全くしらないが、誰かにつらそうに愚痴っていたのを見かけたことがあった。

 その当時でも、自分に縁のない地方の国立大で生活スタイルを変えてなじもうと頑張るよりも、首都圏周縁の私大がいいのか、と勝手に結論付けた。 

 

 そんなことを考えていたら、こんなコメントもあった。

 

 

 辛い…

 

結果の分析

 上記ツイートの通り、結果は私の予想を外れた。

 

 地方国立大  41.8%

 大都市圏周縁の私立大 58.5%

 (計 193票) 

 

 私の相互フォローの多くは首都圏の大学院出身で、大都市圏で暮らしているか就職しており、大都市圏が多数派に偏る可能性があったにも関わらず、である。(そもそもアカデミア人口の地域分布がそれだけ偏っているのかもしれない―専任にでもならなければ、地方にいないのだろう。PDで地方都市に暮らす人は少数派だろう)

 先のツイートのように、すでに地方国立大を体験した人々の意見も入っているのかもしれない。逆に、大都市圏周縁の私大から地方国立大に行く人は、もともとのポストの数として少ないと思われるので、そういうこともあるかもしれない。それにも関わらず、私の予想以上に、地方国立大が希望されている。

 さらには、上記のようなコメントや、「私立の方が給与が高いんじゃないか」「定年が遅い」とかいう、経済的なメリットを示唆するようなコメントがあったにも関わらず、である。

 つまり、国立大学の予算や「改革」の惨状はよく話題になるが、それでも地方国立大学に魅力を感じる人は多いということである。

 

 一方で、以下のようなコメントも見られた。

 

鍵:「一つ目のポストは地方国立大学にはもう、ほぼないと思うのですが。十年くらい前まではそれなりにあったと思いますが。」

 

 私のアンケート質問は、いずれも「任期なし」であることを条件にしていた。しかし、実際には「任期なし」はほぼないという。

 

 考えてみれば、近年「任期なし」の大学専任ポストに就職した、研究業績も輝かしい若手研究者2名は、地方私立大に就職した(それぞれの出身地でもなかった)。その2名は、地方国立大の「任期なし」職があったら、そちらにチャレンジしていたのかもしれない。

 また、近年、地方国立大に就職したのを知っている4名のうち、1名は「任期付き」だし、もう1名は任期付きかどうかはしらない。残り2名は「〇〇教育大」である。これも任期つきと聞いたような聞かなかったような。4名は全員、過去に学振DC/PDをとったことがあるand/or科研の若手研究獲得済みなので、研究者としては「成果をあげている」方になる。

 (なお、上記を含む、このアンケートツイートにコメントした研究者は、全員私と分野が異なる。そしてそれぞれ分野がすこしばらけている。したがって、私が具体的な就職先を挙げた人たちは、ツイートをした人たちとは一致しない。)

 

結論

 「任期なし」採用をしていれば、地方国立大にも、十分応募がある可能性がある、ということなのだろう。しかし、現状として、これは中の教員が声を上げても無理、ということで、本当に世知辛い世の中である。

 研究の業績がある程度ある若手研究者は、積極的に地域問わず私立大学に応募しており、私立大学の研究力は格段に上がってきているのだろう。

 hmmmm… そのわりにはうちの所属大学に応募が多くないように思えるのは、単純にうちの大学が人気がないだけなのか。しょぼん。

 というか、うちの応募書類が面倒くさすぎるとも思う(要旨の字数を定めたり、履歴書等は、印刷もするけど、データとしても提出せよ、と)。少し前に、これを学部の専門科目の教授にちらっと言ってみたのだが、「準備期間はまあまああったではないか」と、一蹴され、気に留めてくれなかった。本学に着任する意思がある人を振り落とすためと思うのかもしれないが、逆にそういう面倒なシステムを残して公募することが、外から見て「あれはきっと業務システムが古くて効率化されていない大学だ、避けておこう」という判断にもなりやすいのだが…私に提案する力ができたら、応募書類・方式を変えられるよう、なんとかしよう…