ALL iz thiik hai! 一社会言語学者のブログ

社会言語学&バイリンガリズム&南アジア系移民 研究を中心とした自分の思索の記録 ALL iz thiik hai とは、訳すと「ALL is オーケーだ」。かなり色々なものをかけたマニアックで深ーい表現。

海外の同業者から驚かれたことー男性の育休・夫が妻の姓を名乗ること

男性の育休

現在、私自身は短い育児休業中だが、夫も出産後から3月末まで、会社にぶつぶつ言われながら4ヶ月半育休を取得した。

夫が4か月半育児休業を取得するということで、海外(ドイツ・オーストリア、香港、スイス)の研究者から、「日本はそんなにpaternity leaveが進んでいるのか!?」と驚かれた。



今日聞いた話だと、スイスでは女性は産後休暇を含め4か月(フル有給で)休めるらしい。その後1年だか(ちょっと期間の詳細は忘れた)は無給で休めるが、職場復帰は保証されていないのだそう。男性は、1か月のみ育休で休めるらしいが、それでさえなかなか難色を示されるらしい。大学教員だと、大学の独自規定で女性が6か月、男性が3か月だったりするのだそう。

香港の研究者は、男性は1か月(無給か有給かは忘れた)でとれると聞いた。

ちなみに、いずれもまだ産休・育休をとっていない人たちの話なので、もしかしたら誤りがあるかもしれない。取ろうと思えば法的には男女ともに2年まで認められていて、給付金が出る日本はいいね、と言われた。

夫婦の姓

育休の制度のほかに、海外の人に驚かれるのが、日本では結婚時に夫が妻の姓に改姓することができる、ということである。

欧米では、結婚すると妻が夫の姓を名乗ることが一般的で(二重姓もあるが)、中国・韓国では、夫婦別姓が一般的である。中国・韓国では、夫の姓を名乗れないという日本とは逆の形で、妻の結婚後の地位の低さ(夫の氏の正当な一族ではない)を示していると考えられているという。

そのような中で、日本では西洋とは反対で夫が妻の姓を名のることができるなんて、ジェンダーギャップの大きい日本というステレオタイプから外れるので、びっくりなのだろう。

また、日本では日本国籍保持者が外国籍保持者と結婚した場合は、日本国籍保持者の方は男女いずれでも、夫婦同姓・改姓を要求されない。

日本では夫婦同姓、しかも夫の姓を名乗るのが「常識」とされている。夫の姓を名乗って当然、夫の姓を名乗らないのは、夫や義母を馬鹿にしている、と、私は義母に猛烈に恨まれている。しかも、実の両親まで、「常識」に反し義母を憤慨させた私を非難する。私が夫の姓に改姓するか、ペーパー離婚するかしなさいと言われ、断絶状態に陥っている。事実婚だったのをこっそり入籍したのは、日本では父母が夫婦として法律上結婚していないと、子どもに対して父母の片方のみしか親権がもてないからだ。

私が姓を変えないのは、研究者として不便が多いからだ。ビザが取れない場合がある、業績カウントのときに不利になる、とよくいわれる。私は、もう自分の姓で本や論文を出版し、年がら年中、自分の名義でやってくる研究関連のいろいろな請求書の処理や学会費の振り込みや物品費の銀行口座振り込みを行い、単発の非常勤先が増えるたびに、マイナンバー等の手続きが必要である。実の両親は、戸籍上男性の姓で旧姓を通姓としている女性研究者なんていくらでもいるだろう、というが、すべての手続きや支払いにおいて、毎回毎回自分の新姓と旧姓を相手に伝え、相手もそれに対応する手間を、なぜ選ばなければならないのだろうか。

法律上は権利が認められているのだけれども

「結婚すると妻は夫の姓、夫は夫の姓」や「妻が産休・育休をとって子育てする」という世界でよくみられるジェンダー規範に反して、日本では、夫が妻の姓を名乗ることができるし、育休を申請できる。
しかし、法律上、制度上、そういうことが可能であっても、社会的になかなか許されなかったりするのが、結婚する人や子供を産む人の葛藤となっている。法律・制度は整えて権利は用意しておいたから、あとは個人の自由だよ、と国が言っても、社会的に強い立場にあると考えられている人が弱い立場にある人にその権利を認めず、泣く泣くその権利を放棄している。それで国は「いや、個人の自由意思、個々人をとりまく環境に柔軟に合うようにまかせていますので」としている。そんなわけで、男性が育休をとると、法律上は不利益な扱いをしてはならないといっても、評価に響くし、夫婦同姓が強制され、夫婦でないと共同親権が得られないということで、男性が改姓すると、女性側はこうした周囲の人々(上の世代)からひどい目にあっても何からも守ってもらえない。若い世代、次の世代の実態と法律が合った日本社会にいち早くなってほしい。