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ALL iz thiik hai! 一社会言語学者のブログ

社会言語学&バイリンガリズム&南アジア系移民 研究を中心とした自分の思索の記録 ALL iz thiik hai とは、訳すと「ALL is オーケーだ」。かなり色々なものをかけたマニアックで深ーい表現。

菓子「ひよこ」の英訳と「私のアヒル」

異文化間コミュニケーション 英語

成田空港にあった「ひよこ」の広告

 国際空港のゲートから税関までの道のりは、お店もなく、広告が目につきやすい場所だ。日本に帰国するたびに、ここの広告を見るのを楽しみにしている。

 日本の観光協会や、娯楽施設の広告、通信業界の広告、菓子業の広告など、いろいろなものが見られる。言語も、英語だったり、日本語だったり、最近では中国語もあったように思う。

 今回は、お決まりディズニーリゾートやNTTドコモのほかに、上野動物園(都立)の広告を新しく確認することができた。

 一番興味深かったのは、入国審査に入るエスカレーターのところにあった菓子「ひよこ」の広告である。基本的にすべてが英語で書かれているのだが、「ひよこ」の説明として、以下のように書かれていた。

 

'the famous confection loved throughout Japan for its pretty baby chick shape'

 

どこが'quaint English'なのか

 母語話者ではないが、ひよこの説明に、一瞬うーんと思った。

 ネットで検索したら、I'll think of something later: Anglo-Russo-Japanese allianceという2010年付の個人ブログには、ひよこ自体はほめながらも、この表現を"quaint English"と表現していた。"quaint"は、「古風」「趣のある」「変」という肯定的・否定的な意味があるが、ここの文脈からすれば、消極的に、失礼にならないように「変だ」と言っているようにとれる。

  同記事には、この英語の表現はひよこのウェブサイトにあったそうだ。しかし、私がサイト内検索も含めて確認したところ、見当たらなかった。(その後消されたのだろうか?)

 第一のquaintポイントは、confectionという語と、その後ろにたくさんの修飾節がついていることだと思われる。'for its pretty baby chick shape'で6語、'loved throughout Japan'で3語、"the famous"で2語。英作文(和文英訳)の添削していると、こういう表現によく出くわすが、英語圏ではここまで修飾節の重い表現はあまり見ない。受験ではOKだが、なぜかネイティブに直されてしまう文の好例である。英語圏なら、シンプルに"Japan's (all-time) favourite confection"としそうだ。英語圏でも、複雑な話でなければ、語の前で修飾する方が好まれているからだ。

 第二のquaintポイントは、語のコロケーション(どういう語と共に使われやすいか)にある。(次節)

 

"Pretty baby chick"という文字列に関して

 この記事を書いた人が同じところに着目したかどうかはわからないが、pretty、baby、chick、は、どれも性的対象の女性を表現するのに使われる語句である。元の意味はそれぞれ「きれいな」「赤ちゃんの」「ひよこ」で、そのようにして使われることが多いが、babyやchickは特にそうでないときもある。

 

 "pretty baby chick"や"baby chick"はひよこの画像が出てきた。例えば、グーグル画像検索で、"pretty baby"と入力すると、どうやらそのようなタイトルの映画があったのか、女性(一部半裸)の画像がヒットする。"pretty chick"も、人間の女性の写真ばかりが出てくる。"chick"自体がひよこを意味するし、それだけで意味できるはずだが、"baby chick(赤ちゃんひよこ)"というようにbabyをつけて二重に小ささを表現しなければ、動物のひよこにならないのだろうか。"pretty chick"や"cute chick"にできないのは、悩ましいことだろう。

 

(蛇足)イングランド中部の呼称としての「私のアヒル」

 ちなみに、英語では、性的な意味でなくても、親しさを表した呼称として動物がよく使われる。私が住んでいた英国レスターシャー州では、よく「ミドック(my duckがなまったもの)」が使われていた。親しい人(配偶者、恋人、子ども)だけでなく、人によっては(特にタクシーとか駅員とか、労働者~中産階級の下のサービス業の人たち)見知らぬ人にも親しみを込めて使っていた。

 

 レスターシャー州の北西にあるダービシャー州の話題だが、こんな記事も見つけた。

www.derbytelegraph.co.uk

 

 この記事の通り、"Ey up, mi dock (Hey up, my duck)"で「やあ」を意味したし、発話の最後の"..., mi dock"は「~なんだよ」というニュアンスで使われていた。

 もちろん、方言だと思われているので、標準語&書き言葉&「品のある言葉遣い」を中心とする学校ではあまり使われなかった。