ALL iz thiik hai! 一社会言語学者のブログ

社会言語学&バイリンガリズム&南アジア系移民 研究を中心とした自分の思索の記録 ALL iz thiik hai とは、訳すと「ALL is オーケーだ」。かなり色々なものをかけたマニアックで深ーい表現。

日系カナダ人日英コードスイッチング研究のまとめ(作業中)

 日英コードスイッチングは、社会言語学の教科書でよく言及されるが、ほんの短い紹介で終わる。そのため、どのように研究され、どのようなことがわかったのか、あまりよく知らない人も多い。

 Nishimura(1951-2004)はハワイでの交通事故で亡くなったし、コードスイッチングの研究も盛んではないし、学術的な潮流としても時代遅れとなり、この興味深い研究データは、あまり省みられることがない。

 ここで少し、その研究に関して、詳細なメモをとっておくことにする。

 主に、次の二つからの情報をまとめている。

Nishimura, Miwa (1995) Varietal conditioning in Japanese/English
Code-switching. Language Sciences, Vol. 17. No. 2, pp. 123-145,

Nishimura, Miwa (1998) Japanese/English Code-switching: Syntax and Pragmatics. Peter Lang.  

会話参加者とデータに関して

- カナダの日系二世(Nisei)のコードスイッチング (以下CS)

- データ収録は'early 1980's' で、話者らはみな'in their late fifties' (Nishimura 1995:161)

- 会話参加者 (主に 1995:160-161)

  • Nisei - カナダ生まれの日系2世。全員がCSするわけではない。8人のうち、4人がCSしたが、残り4人は英語のみで会話した。CSした3人(Midor, Geoff, Violetの夫Yasu)は、日系人の多い地域で生まれ育ち、日系人収容所にいたときには既に10代後半だった(残り1人であるSeanは、日本に渡った親族・家族のためにも、意識的に日本語を学習した)。CSしない4人(Yoji, Toshi, Margo, Brian)は、日系人収容所以後、日系人が固まって住まなくなった時代に10代後半を迎えた。言語使用の選択が異なるのは、社会情勢・年代の違いによるとNishimuraは考えている。
  • Native Japanese - 日本で生まれ育った人、Nishimura本人を含んでいる。というより、Nishimuraのデータでは、基本的にNishimuraしかこのカテゴリーに属さない。Nishimuraいわく、二世は、このカテゴリーの人たちに対して、意識的に日本語を使う。
  • 「帰化2世(kika-Nisei)」(カナダで生まれたが、日本でprimary&secondary教育を受けた、日本語ドミナントバイリンガル) 第二次世界大戦以前は、子どもを日本で教育させる慣習が少しあった。しかし結局この人たちは日本語の読み書きはできても、英語運用能力は十分でなかったので、職が少なかったとNishimuraは書いている。VioletとFumiがこのカテゴリーに当たるが、二人は"limited English"と記述され、コードスイッチは"to some extent"とされている。
  • 「三世(Sansei)」 日本語が話せない、英語モノリンガル。第二データに参加したSeanの甥がこのカテゴリーに当てはまるようである。

- Nishimuraは親族として彼らと以前から交流があり、家に滞在することができた。滞在している間の観察により、話者らの主な言語使用の傾向をつかんだ。その上で、録音の機会を設け、録音に協力してもらった。

- MidoriとGeoffが参加した、参加者や場所の異なる5つの会話をデータ化している。

- 一番初めのデータは、親族夫婦(MidoriとGeoff)に、日系としてのカナダ在住体験について、彼らの自宅で語ってもらったものである。(つまり、Nishimuraを含め、3人の会話)

- 兄弟でも、年代差でCSするかどうかが変わる。Geoffの妹Toshi、そしてその夫であるYojiは、CSしない。

 

二世のレパートリー

  • basically Japanese variety - 英語の単語が挿入される、「基本的に日本語」の変種。主にNative Japaneseの存在によって引き起こされる。
  • basically English variety - 日本語の単語が挿入される、「基本的に英語」の変種。
  • mixed variety - 二世が日本語と英語の両方を使わなければならないときに起こる。両言語を使わなければならないというのは、日本語だったら、帰化二世または日本人がいるから、英語だったら、日本語で言えないから。

        - 文間CS.文中CSの両方が見られる。

        - 次のように、multi-functionalである

 

(1) 話者と聞き手の間の相互行為的プロセス(interactional processes)に関連するもの

(a) reach-out strategy

              (b) involvement intensification

              (c) Frame-marking

              (d) Topic introduction

       (2) 談話の構造に関するもの

(3) スタイル的な効果 

  (a) 引用

(4) 機能的に中立