ALL iz thiik hai! 一社会言語学者のブログ

社会言語学&バイリンガリズム&南アジア系移民 研究を中心とした自分の思索の記録 ALL iz thiik hai とは、訳すと「ALL is オーケーだ」。かなり色々なものをかけたマニアックで深ーい表現。

「おうち英語」に関する雑感

(注:「おうち英語」の実践について役に立つことは、書いていません。あくまで社会言語学者の「雑感」として、このテーマについて考えた過去の思い出話をつれづれ書いています。) 私の「子どもと英語学習」に対するスタンスは、過去のX/Twitter投稿にたび…

大学教員(人文社会科学系)、就職するならどっち?アンケート<地方国立大 VS 大都市圏の周縁の私大>

アンケートをとった動機 私の予想―大都市圏の周縁の私大が7~8割 結果の分析 結論 アンケートをとった動機 最近、こんな投稿があった。 正直、先日リツイートした某国立大の歴史学公募だけども、「オランダ」という条件の厳しさに加えて、すでに一部の国公立…

オンライン語学講座(マイナー言語)を楽しむ―コミュニティの重要性

同業者(大学教員・言語学)が書いた、以下の記事群に触発されて、本記事を書くことになった。以下の記事群は、主にオンライン個人レッスン・セミプライベートレッスンと独学のコツを書いたものだ。 note.com 一方で、本記事では、ゆるゆるオンライングルー…

パキスタンがどこにあるか忘れても、聞いてくれればいい

イランを「アラブ諸国」扱いしてしまったアナウンサー 私は幼少時から地図が好きで、幼稚園のとき、世界地図帳を買ってもらった。今でも30年以上前発行のその地図帳は自宅にある。ソビエト連邦、西ドイツ、東ドイツが載っている。そう聞くと、だいぶ世界が変…

東京オリンピック・パラリンピックのコンセプトは非共通語にしてほしい

dlitさんの記事を読んで触発され、私も、ざっくりと私見を書いてみた。 (2021年7月22日 9:52更新 推敲していなかったので、少しだけいじりました。下線分が、初版と少し変わったところです。内容ないし主な論旨は変えていません。) dlitさんの記事 dlit.ha…

言語人類学(授業用)YouTube動画3選

講義には何かしら動画を入れるといいというのは、教員はよくわかっている。話や文字や聞きづらくても、動画は一気に集中力を高めてくれる。また、内容がとても印象に残る。 だが、適切な動画を見つけるのには、意外と時間がかかる。動画の言語、内容(信ぴょ…

購入して8年以上ー月経カップのメリット、使い方、その他

時々ネットで話題になったりならなかったりの月経カップ。昨年の台風の時期だったかに、話題になり、色々な使用感の感想が出てきた。最近は、新型肺炎の感染拡大とどう関係するか全くわからないが、買い占めが起きたと言う。デマや極度の不安からの買い占め…

研究者に「残留孤児のこども」と呼ばれて

大学1年の春学期、在日コリアンに関する授業を履修した。教員(ここではA先生、と呼ぼう―当時教授だった)はとても意欲的で、学生もその熱に引き込まれていた。教育にも、研究にも熱心なタイプだ。実はA先生は、昔々、在外研究中に父と出会っており、知り合…

「面白さ」と「わかりやすさ」が犠牲にするもの―「日本人女性の声が高いのは、ちっちゃいと思われたいから」について

0. はじめに 0.1 電話口の声のトーンをあげること 1. 問題の番組「日本人女性の声が高いのは、ちっちゃいと思われたいから」 1.1「チコちゃん」は何と言ったか 1.2「コミュニケーションを円滑にしたい」から「ちっちゃいと思われたい」への論理的飛躍 1.3 メ…

「正しい」表記とは?「パーキスターン」と「パキスタン」をめぐって

先日、東大名誉教授の沼野充義氏(ロシア文学・世界文学)の、以下のようなツイートを見た。 最近日本政府は「グルジア」という国名を「ジョージア」に変更した。より正しくなったわけではなく、ロシア語表記から英語表記に切り替わっただけ。自称はサカルト…

映画「ヒンディーミディアム」の雑感ー英語を話せなくても、インドは「英語国」の自信

2019年9月本邦公開予定のインド映画、「ヒンディーミディアム」(2017)。社会言語学者として見ておかねばと思っていたら、試写会のTwitter抽選に当選し、見られることに。(ダンニャヴァード) 試写会よりだいぶ時間が経ってしまったが、書きかけだったレビュー…

子を「バイリンガル」に育てるのは楽じゃない

私は帰国子女だが、とある帰国子女の知人に聞かれた。 「ちまたでは幼少期から英語を学んでいるとよくないというけど、そんなの嘘だよね?英語媒介プリスクール(日本の)に通わせても大丈夫だよね?」

2018年度の社会言語学 学部ゼミを振り返る① 読んだ論文

今年度はご縁あって、早稲田大学教育学部英語英文学科で一年間(サバティカル代替)、学部3年&4年のゼミを持たせていただいた。テーマは「社会言語学」。

社会言語学(アメリカの地域方言・人種方言)に関するYouTube動画

YouTubeには、言語学関連の面白い動画がいろいろアップロードされているはずである。言語学関連のキーワード、特に英語でそれを打ち込んで検索すると、自分で確認するのにちょうどいいくらいの数の検索結果が出てくる。 しかし、どこかの大学・学会での講演…

『婚礼』ー在ベルギーパキスタン人女子高生がヒロインの仏語(+ウルドゥー語)映画

表題の通り、ベルギーで暮らすパキスタン人(パキスタン系ベルギー人というべきだろうか)の18歳少女の「婚礼」に関する映画がオンラインで視聴できたので、観てみた。

書籍案内:日本語で読める「社会言語学」の教科書~PART 2

だいぶ前に、日本語で読める「社会言語学」の教科書をまとめた記事を書いた。 rikayamashita.hatenablog.com 前回は、2000年以前のものを集めたが、今回はそれ以降のものを集めた。 それ以降のものを集めたが、再読・レビューが終わらないうちに、松浦年男氏…

学振特別研究員→大学教員着任1年目で出産ー2つの注意点

産後の体調の経過も、子どもの体調も順調。育児休業から復帰し、先週末から研究会等に行き始め、久々に本務校に。 着任からもう妊娠していたのだが、本務校には大変によくしていただいて、ありがたかった。自分の耳に入る範囲内では、嫌味ひとつ言われず、ポ…

「あたしおかあさんだから」問題ー「おかあさん」の「感動ポルノ化」と「声」の主体の略奪

昨日あっという間にTwitter上でトレンド入りし、あっという間にトレンドのリストから消えた、「あたしおかあさんだから」というのぶみ氏の新曲の問題。「女性蔑視」が歌詞レベルだけでなく、作詞や歌が男性によるものだというレベルでも、女性を蔑視ないし軽…

海外の同業者から驚かれたことー男性の育休・夫が妻の姓を名乗ること

男性の育休 現在、私自身は短い育児休業中だが、夫も出産後から3月末まで、会社にぶつぶつ言われながら4ヶ月半育休を取得した。夫が4か月半育児休業を取得するということで、海外(ドイツ・オーストリア、香港、スイス)の研究者から、「日本はそんなにpate…

ムーミンと「一国家一言語」幻想からのステレオタイプ化

今年のセンター試験地理Bに、アニメのキャラクター「ムーミン」と「バイキングのビッケ」が登場し、それぞれを「フィンランド語」と「ノルウェー語」と結び付けて答えさせる問題が出題され、話題になった。

【学振】特別研究員よ、世帯主になれ (3/2追記)

2月ももう終わりだが、学振研究員には毎年、この時期にやらなければならない仕事がある。 それは、確定申告である。 学振研究員には、学振の「給与」以外の収入(非常勤講師の仕事など)がある人もいるだろう。ふるさと納税をしている人もいるかもしれない…

映画『海難1890 (125 Years Memory / Ertuğrul 1890)』(2015) を視聴して

トルコ航空機内で『海難1890』を見た。あえて「トルコ航空機内」というのは、トルコ航空機は、イランから日本人を避難させた航空機として映画の後半で登場するからだ。 映画のあらすじは、Wikipediaの日本語版等にも詳しく載っている。第一部は、オスマン帝…

菓子「ひよこ」の英訳と「私のアヒル」

成田空港にあった「ひよこ」の広告 国際空港のゲートから税関までの道のりは、お店もなく、広告が目につきやすい場所だ。日本に帰国するたびに、ここの広告を見るのを楽しみにしている。 日本の観光協会や、娯楽施設の広告、通信業界の広告、菓子業の広告な…

メモ:在日ブラジル人若年層のコード切り替え(エレン・ナカミズ)

在日ブラジル人若年層のコード切り替え(エレン・ナカミズ 2000、2003)

小山亘『コミュニケーション論のまなざし』(2012年、三元社)

コミュニケーション論のまなざし (シリーズ「知のまなざし」) 作者: 小山亘 出版社/メーカー: 三元社 発売日: 2012/04 メディア: 単行本 クリック: 5回 この商品を含むブログを見る 出版社が提供している目次(ここ → コミュニケーション論のまなざし )が詳…

『在日パキスタン人児童の多言語使用』を出版してよかったこと

先週後半は、拙著『在日パキスタン人児童の多言語使用』を読んでくださった、私の存じ上げない非研究者の方と、オンライン、オフラインでお話しできました。 お二人とも、それぞれ、図書館で借りて読んでいただいたそうで、嬉しかったです。 本を出版してよ…

研究は趣味ではない

先日、会社勤めの友人と久々にランチした。 これまで感情や意見のすれ違いがあったこともあったけど、基本的には互いを尊重してこられた、とても親しい友人だ。 研究世界にいると趣味が続けづらいといったら、まあそうだよね、と言われ、 「でも研究は趣味み…

ジム・カミンズ&中島和子『言語マイノリティを支える教育』(2011年、慶應義塾大学出版会)

バイリンガリズム、言語教育、相互依存仮説。 聞いたことあるけど、一体どこの何を読めば詳しくわかるのか。 カミンズの古い論文を読んでいけばいいのか?でもカミンズは寡作だ。 私を含め、そんな困っている人のために、中島和子氏がエネルギーを注ぎ込んで…

宝塚歌劇『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』 星組@東京

大変幸運なことに、『恋する輪廻オーム・シャンティー・オーム』の宝塚版を見ることができた。しかも、私の初・宝塚鑑賞となった。 (ポスター | 星組公演 『オーム・シャンティ・オーム -恋する輪廻-』 | 宝塚歌劇公式ホームページ) ポップで「マサ―ラー…

映画『ミスター&ミセスアイヤル Mr. and Mrs. Iyer』(2002)

タミル人バラモン(ヒンドゥー教徒上位カースト)(かつ物理学修士)のミーヌが、山奥の辺境から、乳児を連れて一人で夫+夫親族の待つコルカタに戻る間に、勃発した地域的な宗教対立抗争に巻き込まれる。父の知人の知人である野生動物写真家"ラージャー"が…